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2025-10-25 22:52:00

鉄の火が島をまとめる ― 壱与とマダガスカルの女王たち

鉄の火が島をまとめる壱与とマダガスカルの女王たち

序文

物語『EPIKIA(エピキア)』を書き進めるうちに、古代日本、倭国の統一について調べる機会が増えました。卑弥呼が女王として登場した時代、そしてその後――。魏志倭人伝には「卑弥呼死して大乱起こる」とあり、後を継いだのが、わずか十三歳の少女・壱与(いよ)でした。

この壱与の時代、鉄器が列島の各地に広まり、戦と農の秩序を結びなおす新しい政治が動き出した。その姿を考えているうちに、遠い南の島、マダガスカルの歴史が重なって見えました。

鉄の力と島の統一

マダガスカルでも、1819世紀にかけて、鉄器を手にした部族が他の部族を圧倒し、やがて中央高地のメリナ王国が全島を統一しました。その中心に立ったのが、女王ラナヴァルナ(Ranavalona)です。

彼女は鉄の生産と配給を王権のもとに集中させ、武器と農具の流通を支配することで国家を築きました。鉄は単なる道具ではなく、秩序を再生する力でした。

日本でも、壱与が卑弥呼の死後に乱れた国々をまとめ、鉄器を持つ勢力と手を結んで、再び倭国をひとつに導いたと考えられます。二人の女王はいずれも、「鉄」を通して島の平和を築いたのです。

火を制する者が国をまとめる

卑弥呼の時代の「鉄の火」、壱与の時代の「再統一の火」、明治維新の「蒸気の火」、そしてマダガスカルの「鉄槍の火」。

外から伝わる技術の火が、いつの時代も島を動かしてきました。火を手にした者が秩序をつくり、その火を制した者が国家を築いた。鉄器、銃、蒸気――。形は違っても、「外の火が内の統一を呼び起こす」という島国の共通のリズムが感じられます。

作者の想い

学者ではありませんが、物語『EPIKIA』を書き進めるなかで、倭国の統一を考えていると、マダガスカルの女王の物語に心を惹かれました。鉄器を手にした部族が他部族をまとめ、女王が全島を統べる――その展開が、壱与の時代の再統一の情景と重なって見えたのです。

もちろん、これは学問的な比較ではありません。卑弥呼の後を継いだ壱与の時代に、もしかしたらそんな出来事があったかもしれない、という物語作者の空想にすぎません。

それでも、遠い島々で、同じように鉄の火が人々を結び、一人の女性がその中心に立ったという歴史を知ることで、『EPIKIA』の世界にも、少し現実の息づかいを吹き込めた気がします。

結語

火を見た島は、心をひとつにする。それが、古代から続く島国の記憶なのかもしれません。

このエッセイは、鉄器がもたらした統一の記憶を、壱与とラナヴァルナという二人の女王に重ねた小さな試みです。学問というより、物語を書く者としての想像の旅。そして、その想像の中に、人が「火」を手にした瞬間のまぶしさをもう一度見つけたい――そう思いながら、筆を置きます。


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文責:RICOJE(リコジェ)・EPIKIA制作メモより

 

本稿は、物語作者による創作的考察であり、学術的主張を目的とするものではありません。