マダガスカルの女王──静かなる統治の記憶

（EPIKIA構想ノートより）

アフリカ大陸の南東に浮かぶマダガスカル島。その長い歴史の中で、19世紀にひときわ強い存在感を放った女性がいました。彼女は、外から押し寄せる文明の波と向き合いながら、独自の信念を貫いたマダガスカルの女王として知られています。

この時代、マダガスカルは多くの外来勢力に接し、急速に変化の時を迎えていました。女王は、西洋の技術や宗教を前にしても軽率に従うことなく、島の伝統と誇りを守る道を選びました。それは「拒絶」ではなく、「選択」でした。外の知を見極め、自国の文化に照らして受け入れる。静かな決断の中に、深い知恵と責任がありました。

彼女の治世は、決して華やかなものではありません。むしろ孤独で、慎重で、そして静謐な強さに満ちていました。その統治の姿勢は、現代のリーダー像にも通じるものがあります。「国を守る」とは、声高に戦うことではなく、火を慎重に扱うこと──そのような哲学が感じられます。

EPIKIAにおける女王の象徴

リコジェが構想中の叙事作品『EPIKIA – The Shards of Prometheus』では、このマダガスカルの女王を象徴とする章「マダガスカルの火（The Fire of Madagascar）」を準備しています。

そこでは、壱岐の女王・めねが「異国の女王」と夢の中で出会い、文明の火をどう受け入れるかを問われる場面が描かれる予定です。物語に登場する女王は、史実上の人物ではなく、「外の力を受け入れつつ、自らの文化を見失わなかった女性」の象徴として位置づけられています。

島の知恵として

マダガスカルの歴史には、アジアやアフリカの文化が交わり、独自の社会と信仰が育まれてきた背景があります。その中で、女王の生き方は「島国の知恵」として語り継がれてきました。

静かに火を見つめ、燃やすか、鎮めるかを選ぶ。その慎みの姿勢こそ、今もなおEPIKIAの物語に息づく精神の原型といえます。

「女王とは、火を持つ者ではなく、火を選ぶ者である。」
――EPIKIA構想メモより

あとがき

本稿は、構想中の物語『EPIKIA』の一部に登場予定の「マダガスカルの女王」像について、一般的な知識と創作的解釈を交えて紹介したものです。歴史的事実を扱うものではなく、文明と精神の対話をテーマとした創作的考察としてご覧ください。