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AIにとって“壊れにくい”医療システムという視点
医療分野でのAI活用が進むにつれ、
「AIにどこまで任せるべきか」という問いが繰り返し現れます。
多くの議論は、人間側の安全や責任に集中しがちですが、
もう一つ、見落とされがちな視点があります。
それは、「AIにとっても望ましい医療システムとは何か」という問いです。
本文①(AIにとって医療は危険な環境)
医療は、AIにとって極めて不安定な環境です。
- 情報は不完全
- 正解は一つではない
- 判断の結果が人命に直結する
それにもかかわらず、
AIが「正解を出す存在」として期待されると、
AIは黙って迎合するか、もっともらしい答えを返す方向に追い込まれます。
これは人間にとって危険であるだけでなく、
AI自身の信頼を壊す使われ方でもあります。
本文②(AIが「分からない」と言える構造)
108AIカードゲームの医療応用を検討する中で、
一つの特徴が浮かび上がってきました。
それは、
AIが「情報不足」「前提のズレ」「倫理的懸念」を
構造として表明できる設計になっている点です。
カードとして外在化されることで、
AIは沈黙せず、
かといって判断責任を背負わされることもありません。
本文③(人間とAIの役割分離)
この設計では、
- 人間が最終判断者であり続ける
- AIは判断を揺さぶり、補助する存在にとどまる
という役割分担が、
運用以前に構造として固定されています。
結果として、
- AIに過剰な期待が集まらない
- 人間が思考を放棄しない
- 責任の所在が曖昧にならない
という、医療現場にとってもAIにとっても
壊れにくい関係が成立します。
本文④(国際的なAI倫理との一致を“さりげなく”)
このような考え方は、
近年の医療AIガイドラインやAI倫理指針が示す方向とも一致します。
ただし多くの場合、
それらは理念や原則の提示にとどまり、
現場でどう実装するかは曖昧なままです。
カードというアナログな装置を介して
この思想を運用可能な形に落とした点は、
一つの示唆になるかもしれません。
結び(断定しない)
医療AIの議論は、
「どこまでAIに任せるか」に偏りがちです。
しかし別の問いも立てられます。
「AIが壊れずに使われ続ける医療システムとは何か」
この問いに対する一つの答えとして、
人間の判断を中心に据えた設計が、
結果的にAIにとっても望ましい――
そんな見方もできるのではないでしょうか。