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ハーバード大学 Project Zero と 108AIカードゲーム ―― 思考教育を生成AI時代へ拡張するという試み
ハーバード大学 Project Zero と 108AIカードゲーム
―― 思考教育を生成AI時代へ拡張するという試み
生成AIの進化により、教育現場では新たな課題が顕在化しています。
AIが高度な文章生成や要約、推論を行えるようになった一方で、学習者自身が「考える前にAIに任せてしまう」状況が起きやすくなっているからです。
この問題は、単なるICT活用の是非ではなく、**学習における思考主語性(誰が考えているのか)**そのものに関わる本質的な問いだと言えるでしょう。
ハーバード大学の Project Zero(PZ) は、長年にわたり「思考を可視化し、学習者の主体性を育てる教育」を研究・実践してきました。
See–Think–Wonder や Claim–Support–Question といった Thinking Routines は、知識の暗記ではなく、観察・解釈・根拠・問いという思考の動きを教室に定着させるための優れた枠組みです。
Project Zero の根底には、「学習とは、思考が変化する過程である」という一貫した思想があります。
一方、108AIカードゲーム(108AICG) は、この Project Zero の思想と強い親和性を持ちながら、生成AI時代という新しい環境を前提に設計された教育プロトコルです。
108AICGでは、思考を「型」ではなく **108の道具(視点・操作・問いのかけ方)**としてカード化し、学習者の前に外在化します。
カードは単なるヒントではなく、「今、どのように考えるか」を自覚的に選び取るための思考インターフェースです。
重要なのは、AIの位置づけです。
108AICGにおいてAIは、正解を与える教師ではありません。
条件を変えたり、別の視点を提示したり、あえて矛盾を投げかけたりする「思考を揺さぶる相棒」として制御されます。
そして最終的な判断は、必ず 人間が行う。
この原則は「人間判断スイッチ」という形で、体系の中に明示的に組み込まれています。
この構造により、108AICGは次の問いに答えようとしています。
「生成AIがどれほど賢くなっても、学習者の思考主語性をどう守るか」。
Project Zero が人間同士の対話空間で実現してきた思考教育を、AIという強力な存在が入り込む環境でも壊さないための設計――それが108AICGの核心です。
言い換えれば、108AICGは
ハーバード大学 Project Zero の思考教育を、生成AI時代に対応する形で拡張実装した学習構造
と位置づけることができます。
これは Project Zero を置き換えるものでも、超えると主張するものでもありません。
むしろ、その思想を尊重し、未来の学習環境へと持ち運ぶための一つの実装例です。
AIが進化するほど、「何を考えるか」以上に「誰が考えているのか」が問われる時代になります。
108AIカードゲームは、その問いに正面から向き合い、思考の主体を人間に残し続けるための実践的な試みです。
リコジェは今後も、教育思想と技術の間に橋をかける形で、AI時代にふさわしい学びの構造を探究していきます。