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108AIカードゲームは「教材」ではなく「思考OS」である
108AIカードゲームは「教材」ではなく「思考OS」である
株式会社リコジェでは、書籍『道具で学ぶAI ― 生成AIを108の道具で考える』を起点として、
紙のカードと生成AI(GPT等)を組み合わせた教育方式
「108AIカードゲーム(108AICG)」 を開発・公開しています。
本記事では、この108AICGについて、
将来的な博士論文を想定した理論章(Theoretical Framework)の構成案を紹介します。
ここで扱うのは、個別の授業事例や実証結果ではありません。
生成AI時代において、
人間が「考える主体」であり続けるための教育構造を、
いかに設計・実装できるか
という問いを、教育理論として整理する試みです。
生成AI時代の新しい教育課題
GPT-5世代に代表される生成AIは、
高度な推論能力と自律的な最適化傾向を持ち、
学習や仕事の場面で極めて有能な「思考支援者」となっています。
一方で教育現場では、次のような課題が顕在化しつつあります。
- 思考の外部委託(Cognitive Offloading)
- 問いを立てる力の低下
- 学習者自身の「思考主語性」の希薄化
AIが賢くなるほど、
人間が「考えなくても答えが出る」環境が整ってしまう。
この逆説的な状況こそが、本研究の出発点です。
既存AI教育の限界
現在のAI教育の多くは、
- プロンプトの書き方
- AIツールの操作スキル
- 効率的な活用方法
に重点が置かれています。
しかしそれらはしばしば、
AIスキル教育と認知教育を混同してしまいます。
本当に問うべきなのは、
「どう命令するか」ではなく
「どの立場で、どの視点で考えるか」 です。
108AI思想体系というアプローチ
108AIカードゲームは、
思考を「技法」ではなく 「道具(Tool)」 として捉えます。
- 視点を変える
- 要素を分解する
- 根拠を問う
- 例外を考える
こうした人間の思考行為を、
108枚のカードとして言語化・外在化しています。
重要なのは、これらが
特定のAIモデルや技術に依存しない
抽象度の高い思考構造である点です。
そのため、GPT-4でも、GPT-5でも、
将来のGPT-6/7でも機能します。
カードゲームを「思考プロトコル」として捉える
108AICGは、単なるカード教材ではありません。
- 学習者がカードを引く
- そのカードに示された思考視点を保持したまま
- AIと対話し、考察を深める
この一連の流れ自体が、
**思考を進めるためのプロトコル(手順)**として設計されています。
ここでは役割が明確に分かれています。
- AI:思考エンジン(言語化・整理・問い返し)
- 人間:思考の制御者(視点選択・判断・意味付け)
- カード:両者を媒介する固定視点
Systemプロンプトによる思想制御
108AICGでは、生成AIの振る舞いを
systemプロンプトによって制御します。
これはAIに賢く振る舞わせるための命令ではなく、
**越えてはいけない境界条件(Boundary Condition)**の設定です。
- 結論を先に出さない
- 評価語を使わない
- カードにない視点を追加しない
このようにして、
AIが思考の主体になりすぎることを防ぎます。
リコジェではこれを
In-House Prompt Governance と呼んでいます。
「思考OS」という考え方
以上を統合すると、108AICGは次の三層構造を持ちます。
- 思想層:108の思考道具
- 実装層:紙のカードゲーム
- 制御層:systemプロンプト
この三層は、
生成AI時代における 「人間側の思考OS」 として機能します。
AIがどれほど進化しても、
人間が思考の主語であり続けるための
最低限の制御構造です。
おわりに
本構成案は、
108AIカードゲームを博士論文レベルで整理するための
理論章の設計図です。
本研究は、生成AIの能力評価を目的とするものではありません。
生成AI時代において、
人間の思考主語性を、
教育理論としてどのように保持・実装できるか。
その問いに対し、
108AICGという具体的な形で応答しようとする試みです。
もし本記事が少しでも気になった方は、
ぜひご自身の言葉でAIに問い直してみてください。
「この内容の要点を500字でまとめて」
生成AI時代の学びは、
そこから始まるのかもしれません。